なぜAPACのLivingセクターなのか?
構造的な住宅需要が投資を後押し
住宅需要の高まり、供給不足、そして住宅収益の安定性といった特性により、APACのLivingセクターには引き続き機関投資家の資金が集まっています。本調査によると、足元の経済および地政学的な不確実性は投資実行のスピードや手法に影響を与えているものの、投資家の中長期的なコミットメントは揺らいでいません。
Livingセクターのポートフォリオ比率は拡大へ
投資家の意向からは、Livingセクターへの投資額の増加だけでなく、不動産ポートフォリオにおける同セクターの重要性が高まっていることが分かります。
複数の不動産セクターに投資している回答者の3分の1は、今後5年以内にLivingセクターが不動産ポートフォリオ全体の30%以上を占めるようになると予想しています。
一方で、日本を除くAPAC地域では、投資適格(Institutional Grade)の既存ストックが限られていることから、市場の機関投資家化のスピードには一定の制約があるとみられます。
投資資金は規模を確保できる市場へ集中
回答者の34%が、Build-to-Rent(BTR)/マルチファミリー住宅を最優先の投資対象セグメントとして挙げており、コリビングやPBSA(Purpose-Built Student Accommodation:学生向け賃貸住宅)を上回りました。
地域別では、オーストラリア/ニュージーランドと日本が最も高い人気を集めています。
その背景として、
• 日本はAPACで最も成熟したマルチファミリー住宅市場を有していること
• オーストラリアは深刻な住宅供給不足と力強い賃貸需要を背景に、大きな成長機会が期待されていること
が挙げられます。
回答者には各項目を優先順位に基づいて評価していただきました。グラフの数値は、7を「最も好ましい」とする7段階評価における平均スコアです。
パートナーシップ主導の市場参入
今後1〜3年間で最も有力な取引手法として、回答者の34%が**ジョイントベンチャー(JV)**を選択しました。
また、
• 73%がリポジショニングや用途変更戦略を積極的に検討
• 56%が現地の専門運営パートナーとの協業を希望
していることが分かりました。
これらの結果は、大規模な安定稼働資産を取得するよりも、新たな供給を創出したり既存資産を転換したりすること、そして現地の運営ノウハウを活用することが現実的なアプローチとなっていることを示しています。
リスクは投資方針ではなくタイミングに影響
本調査は地政学的リスクが高まる環境下で実施されました。
回答者の61%が「より慎重な姿勢になった」と回答したものの、その変化の多くは限定的なものでした。
最大の懸念要因は、
• インフレ
• 高金利の長期化
であり、その結果、
• 安定収益を生み出す資産への選好が強まる
• 開発案件への投資意欲が低下する
傾向が見られます。
しかしながら、APAC Living市場への戦略的な投資意欲は依然として強固です。
価格形成と市場データが課題
投資活動における最大の課題として、44%の投資家が売り手と買い手の価格期待のギャップを挙げました。
これに続き、
• 開発案件の事業採算性(29%)
が主要課題として認識されています。
さらに、
• 取引事例の不足
• 市場透明性のばらつき
も課題となっており、適正な価格評価や投資判断の難しさを招いています。
サステナビリティは「プレミアム要因」よりも「リスク評価要因」へ
回答者の63%がサステナビリティを重要な投資目標と位置付けています。
しかし、環境性能の高い資産に対して追加のプレミアムを支払う意思がある投資家は24%にとどまりました。
この結果は、現時点でサステナビリティが価格上昇要因というよりも、
• 投資判断時のスクリーニング基準
• リスク管理ツール
として重視されていることを示しています。
つまり、優れた環境性能を持つ資産が大きなプレミアムを獲得するというよりも、環境性能の低い資産が値引き評価されたり、追加投資を必要としたりする可能性が高いと考えられています。
APAC Living市場の今後
APAC Living市場の成長ストーリーは、旺盛な投資需要と限られた投資対象資産とのギャップによって特徴付けられています。
今後は、
• 機関投資家向け品質の資産を新たに創出・集約できるプレーヤー
• 効果的なパートナーシップを構築できる企業
• 各市場の運営要件や規制に対応できる投資家
が、この成長機会を最も享受できると考えられます。
レポートでは、資金投入計画、投資対象セクター・地域、取引ストラクチャー、地政学リスクの影響、サステナビリティに関する優先事項など、調査結果の詳細をご覧いただけます。